クリニカルレポート

メディカルソリューション

マンモグラフィ読影ワークステーション マンモディーテ

クリニカルレポート (お客さまの声)

*この記事は、『INNERVISION』2020年8月号に掲載された、医療法人湘和会 湘南記念病院乳がんセンター 土井 卓子先生による「クリニカルレポート」を許可を得て転載しています。

精度管理向上に欠かせない読影ビューア

土井 卓子
医療法人湘和会 湘南記念病院乳がんセンター

~はじめに~

*図1 mammoditeを使用した読影風景

 日本では乳がんの罹患率,死亡率の上昇が続いており,すでに海外が成し遂げたような死亡率低下に転じるには精度の高い検診の実施が重要である。マンモグラフィは,日本では2000 年に住民検診に導入されたが,職域検診,ドック型検診でも使用され,精密検査,診療も加えると撮影方法も読影方法もさまざまである。本稿ではどの現場でも簡単に最適な画像を得ることが可能で,さらに読影結果の集積,分析も容易で検診精度を高く保てる乳腺画像診断ワークステーション「mammodite(マンモディーテ)」の使用経験について報告する(図1)。

住民検診での出会い

 住民検診は多施設でマンモグラフィを撮影,読影し,後日検診マンモグラフィ読影認定医師が二次読影をする方法が一般的である。横浜市は大きな市であり,検診実施施設数も85と多く,使用しているマンモグラフィの機種も多い。2000 年にマンモグラフィ検診を開始した時は,画像をすべてフィルムにして宅配便で二次読影会場に集めて高輝度シャウカステンで読影していた。しかし,急速にデジタル化が進み,2013 年には95%の施設がソフトコピー診断に移行し,二次読影会のためだけにフィルムに焼きつける結果となった。情報量,濃度,輝度などパラメータが異なるため一次読影でモニタを用いて読影した画像と二次読影でフィルムを読影した画像で見え方が異なる場合があり,読影結果が食い違うことが多くなった。イメージャの維持,フィルムの保管,移送にも無駄が多くなり,今後を見据えて2014 年に横浜市は二次読影にマンモビューアを採用することとなった。マンモグラフィ画像を表示することとマンモビューアを使うことはまったく別のことである。さまざまなメーカーの機種で撮影した画像を同じビューアで読影することは容易ではない1)。ところがmammoditeを使用すると,変換の特性や処理,画素サイズの異なる複数の施設の画像でも,同じように鮮明に表示し,元の画像に適合してピクセル等倍表示や階調度を変えながら自在に読影できたことは衝撃であった。これがネットカムシステムズ社のmammoditeとの出会いであった。

 次に,住民検診には読影の精度管理という問題があった。84 名という多数の専門医が1 回に5,6 人ずつ集まって二次読影するのだが,ソフトコピー診断に移行してから,読影時間や要精査率,陽性反応的中度にバラツキが見られた。そこで,各医師の読影時間,読影方法を検討してみた。

 60 例の読影に要する時間を測定すると26 分~ 41 分という開きがあった2)。また,読影手順も実寸大表示のみで読影する医師,ピクセル等倍表示,拡大,濃度変更や白黒反転もする医師もあり,さまざまであった。見落としを避けるには,画像の情報をすべて引き出して読影することが必要であり,自施設の場合は最適画像になるよう設定した最小限の手順で読影することが可能だが,多施設からの画像を読影する場合は全表示を確認する必要がある3)。そこで,横浜市読影管理委員会では読影プロトコールを以下のように統一することとした。MLO・CCの実寸100%表示→MLO・CCの実寸に対する170%表示→ MLO の実寸に対する170%表示→ CC の実寸に対する170%表示→ MLO のピクセル等倍表示→ CC のピクセル等倍表示の順とした(図2)。皆に毎回この煩雑な手順を実行してもらうことは困難ではないかと懸念したが,mammodite ではプロトコールを設定しておけば,専用キーパッドの「進む」ボタン一つで同じ手順で読影を進めることが可能だったのである。読影時にストレスを感じることなく,皆が短時間に同じ精度の画像を見ることが可能で,読影医による差異や見落としをなくすことができた。この機能には驚いた。

*図2 横浜市医師会二次読影会プロトコール

マンモグラフィ講習会での出会い

 2度目の出会いは,NPO 法人日本乳がん検診精度管理中央機構(以下,精中機構)である。ここでもmammoditeが採用されたことは,前述したとおりの理由だったのではないだろうか。読影講習会で,初心者の受講生は普段使用している自施設のビューアと機種が違うため,混乱が起こるのではないかと心配したが,使い勝手が良いと好評であった。講師からも示したい画像をすぐに表示できる,過去画像との比較もしやすく教えやすいと好評である。

当院におけるmammoditeの活用

 3度目の出会いは当院での導入である。当院には複数の乳腺外科医(全員精中機構A 判定)がおり,検診,精査,治療にマンモグラフィを活用しているが,横浜市の検診二次読影や講習会で使用したmammoditeの使い勝手が良いため,自施設での読影にストレスを感じるようになった。毎日の診療のことなので,ビューアの操作性の快適さと画質の良さは,診断精度の向上,針生検の確実性の保持,医師の疲労軽減には必須の条件であり,当院でもmammoditeを導入することとした。

 当院は2 社のマンモグラフィ装置(1 台はトモシンセシス対応)を導入しており,過去画像との比較も大切と考えており,さまざまな読影レイアウトの切り替えが必要である。このレイアウトをワンクリックで切り替えができる操作性の高さ,また,1検査1GB 以上あるトモシンセシス画像であっても,タイムラグがない表示スピードの速さは快適で,ストレスが少なく,読影医思いのシステムであることを実感している。

 また,読影医のみでなく,診療放射線技師との連携にもmammoditeの機能が活躍している。当院ではマンモグラフィを撮影する際,診療放射線技師は気づいたことを患者情報として記入し超音波検査士と読影医に伝達している。導入前は患者情報として紙に記入し回していたが,導入後は検査メモ機能を利用,診療放射線技師の読影所見も入力し,超音波検査士が結果を入力,読影医はその内容を確認しながら読影できるので全情報を見落とさない工夫が凝らされている。検査メモ機能にはポップアップ表示機能があり,皮膚の引き込み,乳頭分泌,皮膚変化の有無など撮影時の貴重な情報を見逃すことがないのは,本当にありがたいと感じている。読影入力はシェーマをドラッグ・アンド・ドロップするだけで病変位置や内容が入力されるシェーマ連動方式であり,基本的にタイピング入力などを行う必要がなく短時間にスムーズに入力できるようになった。

 今後,電子カルテとmammoditeの連携が予定されており,より利便性が高まると期待している。

まとめ

 住民検診で多数の施設の多種のマンモグラフィで撮影した画像を最適表示できる,多数の読影医が誰でも正しくすべての情報を引き出して読影できることが,mammoditeの最大のポイントであった。そして,精密検査機関・治療機関にとっては読影医がストレスなく快適に,診療放射線技師からの撮影情報も見落とすことなく高い精度で読影できることがポイントであった。

 これは乳腺領域に特化し,読影医のニーズに合わせて進化を惜しまないネットカムシステムズ社が,読影医に寄り添って自社で独自に工夫し開発したシステムだからではないかと考えている。開発中にシステムエンジニアの方々が読影現場を頻回に訪れて,ビューアの機能に何が求められているのかを常に研究されていた姿が印象的であり,その努力のおかげで今のmammoditeが完成したと考えている。今後も読影医の要望を受けて,さらに進化していってもらえると期待しており,業種は異なるが日本の乳がん死亡率減少に向けて努力する大切な仲間であると考えている。

●参考文献
1)須田波子:検診マンモグラムのモニタ診断化の企画と現実―今。起きていること―. Rad Fan ,14(6) : 47-50, 2016.
2)土井卓子 : 検診マンモグラフィの読影にモニタ診断を導入して変わったこと. Rad Fan , 14(6) :51-54, 2016.
3)マンモグラム読影の基本. 日本医学放射線学会,日本放射線技術学会 編 : マンモグラフィガイドライン第3版増補版. pp29-37, 金原出版, 東京,2014.